ある方から一本の電話が入った。
癌を患い、余命宣告を受けた方が、死ぬ前にどうしてももう一冊本を出したい。
という相談だった。
部位は、僕の親父と同じ部位。
親父は発覚から1ヶ月ほどで息を引き取った。
そんな経験があったのでそんなに時間がないという事は理解できた。
その方が癌を患った事自体は、もう少し早い段階で知っていて発覚時にも急いで1冊の本を出している。
それから1月ほど経ってからの相談だったので本当に時間がない事は理解できた。
2週間あるかないか
総ページ数。150ページ。紙での原稿になるのでそれをテキストに起こす作業からのスタートだった。
とりあえずスタッフを総動員して作業にかかり、なんとか間に合わすことができました。
ただ、その間に僕の母親も息を引き取りひっちゃかめっちゃかの状態だった。
本当に突然の出来事で、別れの言葉をかけることすらできなかった。
それを悔いてしかたない。
そして、今でもある言葉とあの表情を思い浮かべる。
「また、サーフィン行って来たのか?」
って行った後に微笑むあの笑顔。
ただその笑顔は、僕の頭の中にしかない。
そのうち、記憶も薄れていく。
スマホで撮っとけばよかった。
形に残しておけばよかった。
形に残す事の大切さ。
本を作る意味。
ぼくは、大切な仕事をしているなと感じる瞬間だった。